เข้าสู่ระบบ「私の最大の失敗はオーウェンの婚約者選びね」
「どうして?」
ため息を吐くオルメリアにエレオノーラは不思議そうに小首を傾げた。その仕草はとても三十路を越えているとは思えぬ愛らしさがある。
「イーリヤさんはとても優秀で良い子だわ」
「そうね、彼女は才気煥発で人格にも問題の無い素晴らしい令嬢ね」
――イーリヤ・ニルゲ
公爵家の血筋と品位、
加えて独立した商会を切り盛りする才覚もある。
能力、人格ともに将来の王妃として不足はない。そう判断したからこそオルメリアはオーウェンの婚約者にイーリヤを選んだのだ。
「だけど、イーリヤは真っ直ぐ過ぎたのよ」
「それはいけない事かしら?」
エレオノーラの問いにオルメリアは首をゆっくりと振った。
「本来ならいけなくはないわ。問題なのはオーウェンとの相性よ」
「ええ、彼女は素直に自分の有り様を示しすぎました」
オルメリアの言にジャンヌが追随した。。
「きっと自尊心の強いオーウェンにはそれが耐えられなかったのね」
だからアイリスの甘言に踊らされてしまった。
「正直は美徳ですが、イーリヤさんはもう少し自分を隠す術を知るべきでした」
「まだ十代半ばの彼女に己の才能を隠すなんてできっこないわ」
ジャンヌの指摘は酷というものだとオルメリアは苦笑いを浮かべた。
「ウェルシェが異常過ぎるのよ」
才気あふれる若者が自らの能力を周囲に誇示するのはあたりまえである。本来、
「あの若さで人心を掴み才能を使う術に長けていながら、それを周囲に悟らせないなんて……」
感心するオルメリアの横顔にジャンヌは哀愁のようなものを見てとった。
「王妃殿下はウェルシェさんをオーウェン殿下の婚約者にしたかったのですか?」
「えっ!?」
ジャンヌの疑問にエレオノーラがギョッとする。
「ダメよ、ウェルシェさんはエーリックの婚約者です!」
エレオノーラは慌てた。
「何がなんでもウェルシェさんはエーリックのお嫁さんにさせますから!」
ウェルシェのお淑やか演技にすっかり骨抜きにされたエーリックは彼女に首ったけ、ゾッコン、メロメロ、べた惚れ状態なのである。
エレオノーラは母として息子の恋を応援してあげたいのだ。
「落ち着きなさいエレン」
「景品ではないのですから婚約者をおいそれと交換などできませんよ」
オルメリアとジャンヌは息子への愛に溢れるエレオノーラに思わず笑みが溢れた。
「ただ、オーウェンの婚約者選びの時にウェルシェを見誤ったのを悔いているの」
「ウェルシェさんも候補だったの?」
オーウェンの婚約者候補としてウェルシェの名も上がっていた。
今でこそイーリヤの商会で大きな蓄財を築いているが、当時はグロラッハ侯爵家の財力はニルゲ公爵家を凌駕していた。それだけに国内における貴族達への影響力も無視できなかったのだ。
「イーリヤもウェルシェも、どちらも有力な候補でした」
家柄を見ればどちらを選んでも遜色はない。おけげで会議でも紛糾したが、決め手になったのは二人の身上調査であった。
物静かな深窓の令嬢のようなウェルシェは王妃としては心許ないと、満場一致で幼少期より才気煥発なイーリヤが選ばれたのだ。
「それは……身上調査の者達も
「ええ、そのようね」
それなりの人物眼の持ち主であったはずだが、それでもウェルシェの猫被りを看破できなかったらしい。
「自分の目で直接確かめるべきでした」
ハァ、とオルメリアの口からため息が漏れた。
「単純に能力だけ見ればイーリヤさんの方が上だと思いますが、彼女はあまりに真っ直ぐ過ぎるのでしょうね」
「本当に……ウェルシェの方が王妃向きだわ」
ジャンヌにオルメリアは相槌を打つ。
「それに自分の能力をひけらかさず、相手を手の平の上で転がせるウェルシェなら、きっとオーウェンとの相性は悪くなかったでしょう」
オーウェンとウェルシェ、エーリックとイーリヤの組み合わせの方が波乱も無かっただろう。オルメリアには悔やまれてならない。
もっとも、この話をウェルシェが聞けば、嫌な顔をして「冗談ではない!」と叫んでいそうだ。
ウェルシェからすれば王妃など面倒事は御免被るのだ。それに天使のようなエーリックが好みのウェルシェにとって俺様系とんでも王子など絶対に嫌であろう。
「今さら言っても詮無きことね」
「王妃殿下は今後どうされるおつもりなのですか?」
「特別どうもしないわ」
オルメリアは目を細め薄く笑った。
「先程の席で言った通りよ。母としてオーウェンをきつく叱るだけ……ただ……」
「ただ?」
「あなたも言っていたでしょう。学園は小さな王国だって」
「はい、組織の運営のありかたは同じであるかと」
「私も同意します……だから、卒業までにあの子の学園での振る舞いが王として相応しいもので、イーリヤとの関係を修復できたのなら問題はないでしょう」
オルメリアとジャンヌの会話にエレオノーラは不穏なものを感じた。
「もしできなかったら?」
だからエレオノーラは聞かずにはいられなかった。
「私はオーウェンの母であると同時に国母でもあるのです」
オルメリアの顔から表情が抜け落ちた。
「我が子と言えど容赦はできません」
それは彼女の感情がなくなったのではなく、母親としての情を押し殺したのだろうとジャンヌは思った。
王妃としての責務に母として生きられない一抹の寂しさをオルメリアは抱いている。同じ母親としてジャンヌはそれを理解できる。だからこそ次にオルメリアが何を口にするのかも既に察していた。
「オーウェンの王位継承権を剥奪し、エーリックを立太子するよう陛下に進言します」
「――ッ!?」
オルメリアの苦しい決断をジャンヌは目を閉じて黙って拝聴し、エレオノーラは声にならない悲鳴を上げたのだった。
「エーリック、そなたの言い分を訊ねたい」オルメリアの指名を受け、エーリックは居住まいを正して前に出た。「忌憚の無い発言をお許しいただけますでしょうか?」「許します。存分に意見を述べなさい」オルメリアは当然とばかり頷き発言を促した。「まず、グロラッハ嬢との婚約ですが――」エーリックは言質を取るとオーウェンの世迷い言を論破しにかかった。「私が母エレオノーラに懇請した事実はございません。この婚約は王妃殿下からの薦めであるのは周知の事実です」エーリックの言葉に国王、王妃だけではなく周囲の者達も頷く。「それに、グロラッハ嬢とはお見合いの場で初めて顔を合わせたのです。兄上が糾弾された横恋慕などありようはずがありません」「なるほど……」オルメリアの相槌にエーリックは内心でホッと安堵のため息を吐いた。このような論争ではもっと婉曲な表現をしなければならないのが貴族の世界。「次に王族に逆らえずグロラッハ嬢が婚約を承諾したとの話ですが――」だが、オーウェンが直接的に難詰してきた以上は、エーリックもそれに応じなければならないと判断したのだ。だから、はっきりとオーウェンを批判した。「それを言ってしまえば私は誰とも婚約できなくなってしまいます」「その通りですね」この場の誰もがエーリックの主張に頷いた。エーリックに支持が傾いている。オーウェンはジリジリと焦り始めた。「それにグロラッハ嬢は私との婚約を快諾してくれました」「だから、それはグロラッハ嬢が貴様に逆らえず&helli
第34話 その第一王子、本当に短絡的じゃないですか?「……と言うわけで、ケヴィンとウェルシェ嬢の仲を引き裂き、婚約を無理強いするのは王家の横暴と謗りを受けましょう」王座の前でオーウェンは意気揚々と弁舌を繰り広げた。――今こそ過ちを正す時!オーウェンは正義に燃えているのだ。二週間程前、彼は息巻いてエーリックの婚約を破談にするよう国王に直談判した。だが、予想に反して国王からけんもほろろに突っぱねられてしまった。アイリスから聞いた話によれば、ウェルシェはケヴィンを恋い慕っている。ならば、エーリックとの婚約は権力で強いられたに違いない。(なんと憐れな)あの触れれば消えてしまいそうな頼りなさげな美姫が、王家の威光に抗えず涙する様を思い浮かべ、オーウェンは騎士道精神を滾らせた。(父上は側妃エレオノーラを寵愛しているからな)横恋慕したエーリックが母親に頼み込んで国王を誑かしたに違いない。そんな|推測《もうそう》にオーウェンは憤慨した。そこに国王からの呼び出しがあり来てみれば、エーリックやセギュル侯爵など例の婚約の関係者が揃っていた。これは絶好の好機とオーウェンは喜色を浮かべた。(きっと母上が御正道へと正そうと動かれたに違いない)そう信じてオーウェンは皆の前で朗々と自説を披露し、エーリックを糾弾したのである。「今からでも遅くはありません。即刻この縁談を取り止めケヴィンとウェルシェ・グロラッハの婚約
「陛下も愛する側妃の子なら否なはないでしょう?」息子を切り捨てるのは母として苦渋の選択。だが、一国の国母として、それも止む無しなのだ。「ダメです!」ところが、エレオノーラが絶叫するように反論した。「それはいけません!」「どうしてかしら?」凄い剣幕で反対するエレオノーラに、オルメリアが小首を傾げて頬に人差し指を当てた。「最近はエーリックも頑張っているじゃない」「はい、殿下は気弱なところもありますが、己の足りない部分を補おうと日々研鑽されておられる奇特なお方です」ジャンヌも頷き同意を示した。「加えて伴侶となるウェルシェさんの器は王妃になるに不足はありません」「ふふふ、これでエーリックの立太子に何の問題もないわね」勝手に話しを進める二人に慌てたのがエレオノーラだった。「あります! あります! 大ありです!」エレオノーラはバンッとテーブルに手を突いて立ち上がった。「エーリックは王位を望んでいないもの!」「それは関係がないわ」オルメリアは頬杖を突いて王妃らしからぬ態度でエレオノーラを横目で見る。「エーリックとて王家の男児としての自覚くらいあるでしょう?」「それは……だけど……メリー様はご自分の子供が王位を継げなくても良いのですか?」「できればオーウェンには立派な王になって欲しいわ」「だったら!」食い下がるエレオノーラにオルメリアは
「私の最大の失敗はオーウェンの婚約者選びね」「どうして?」ため息を吐くオルメリアにエレオノーラは不思議そうに小首を傾げた。その仕草はとても三十路を越えているとは思えぬ愛らしさがある。「イーリヤさんはとても優秀で良い子だわ」「そうね、彼女は才気煥発で人格にも問題の無い素晴らしい令嬢ね」――イーリヤ・ニルゲ公爵家の血筋と品位、恤民と義心の溢れる人格。加えて独立した商会を切り盛りする才覚もある。能力、人格ともに将来の王妃として不足はない。そう判断したからこそオルメリアはオーウェンの婚約者にイーリヤを選んだのだ。「だけど、イーリヤは真っ直ぐ過ぎたのよ」「それはいけない事かしら?」エレオノーラの問いにオルメリアは首をゆっくりと振った。「本来ならいけなくはないわ。問題なのはオーウェンとの相性よ」「ええ、彼女は素直に自分の有り様を示しすぎました」オルメリアの言にジャンヌが追随した。。「きっと自尊心の強いオーウェンにはそれが耐えられなかったのね」だからアイリスの甘言に踊らされてしまった。「正直は美徳ですが、イーリヤさんはもう少し自分を隠す術を知るべきでした」「まだ十代半ばの彼女に己の才能を隠すなんてできっこないわ」ジャンヌの指摘は酷というものだとオルメリアは苦笑いを浮かべた。「ウェルシェが異常過ぎるのよ」才気あふれる若者が自らの能力を周囲に誇示するのはあたりまえである。本来、韜晦する術は歳と共に覚えるもの
「ごめんなさいね、残ってもらって」「王妃殿下のご用命なれば否やはございません」王妃オルメリアの詫びにシキン伯爵夫人ジャンヌは粛々と目礼を返した。お茶会はお開きとなった。異様な空気の中で続けても意味はあるまい。そうオルメリアが判断したからだ。会場に残っているのはオルメリアとエレオノーラ、そして呼び止められたジャンヌの三人だけ。「それに、私も王妃殿下にお詫び申し上げねばならないことがございましたので」そう前置きしてジャンヌは頭を下げた。「先程はオーウェン殿下を貶めるご無礼を……」「謝罪は不要です」だが、オルメリアはジャンヌの謝辞を遮った。「謝らなければならないのは此方なのですから」「王妃殿下に何の咎がございましょう」「いいえ、私共が無理を言ってオーウェンの側仕えになってもらっておきながら、息子の愚行を止められませんでした」そして、頭こそ下げられなかったが、逆にオルメリアが謝罪したのだ。「王妃殿下!?」これには冷静沈着なジャンヌは仰天した。王族が臣下に対し頭を下げるなど通常ではあり得ない。「そもそも私がオーウェンの教育を間違えてしまったのがいけなかったのでしょう」「王妃殿下、古今東西聖人君子であっても我が子の教導を誤るものです」同じ母としてオルメリアの苦悩をジャンヌは理解できる。「私のような貴族とは違います。王族は求められるものが多すぎ、子の教育を困難にしているのです」「私はオーウェンに多くを求め過ぎたのかしら?
「あ、あなた、いったい何を言って……?」ウェルシェのトンチンカンな言動にオルメリアは戸惑った。それは他の夫人達も同じようで、みな一様に困惑している。「えっ、ですから、シキン夫人は何処かへ行かれるのですよね?……かなり遠方の国へご旅行されるのでしょうか?」ウェルシェが的外れな返事をするので誰もが呆気に取られた。もちろん、ウェルシェだって完全なる曲解であることは百も承知している。「他の国へ行って見聞を広められるなんてとても素晴らしいですわ」だが、ウェルシェは貫き通した。今は多少苦しくても強引に話題を変え、一気に自分の土俵へと持っていく力技こそ有効。どこかトボけたウェルシェの腹黒交渉術の一つである。おっとりした不思議ちゃんを演出していたのも、この交渉術を成功させるのに大きく寄与していた。「えっ、ええ……そうですね」話を振られたジャンヌも対応に困って曖昧に頷いた。「本当に素敵!」ここまで来ればもうしめたもの。再びウェルシェの手の平の上だ。「シキン夫人はそうやって見識を深めてこられたのですわね」「はい?」ジャンヌはいまいちウェルシェの意図を掴みかねた。いや、それはオルメリアを始め会場の誰もが同じであろう。「夫人のお言葉に私とても感銘を受けましたの」「私の……ですか?」いったいそれはどの言葉?ジャンヌは更に困惑した。普通に考えれば、オルメリアへの諫言だろう。だが、ウェルシェがジャンヌの諫言をうやむやにしてしまおうとして
「もちろん、エーリック様をお慕いしておりますわ」ウェルシェは自信満々で(のもたらしてくれる富)と副音声に入れた。嘘は言っていない。「ふふふ、今のは嘘くさぁい」「もう!」「ごめん、ごめん」プイッとウェルシェはむくれてそっぽを向く。キャロルが笑いながら謝罪すると、ウェルシェは横を向いたまま横目で彼女をチラッと見るとため息をついた。「キャロル、私
「ウェルシェは押しに弱そうなだからねぇ」キャロルの指摘にウェルシェはちょっと複雑な気分だった。擬態を解けば男共をあしらうのは訳ない。(だけど、今の私のイメージでは強く出られないしなぁ)エーリックの好みを演出する為のイメージ作りが仇となっている。それはウェルシェ自身も理解はしていた。だが、こればっかりはどうにもならない。「それにウェルシェを強引に口説こうとしている筆頭はオーウェン殿下の側近だし」「ケヴ
「お申し出は嬉しいのですが……」ウェルシェがたおやかに微笑むと目の前の貴族令息は息を飲んだ。あまりに幻想的な妖精の笑貌で、見惚れて言葉を失ったようである。「私には婚約者がおりますの。もう声をかけるのはお止めくださいませ」だが、その愛らしい口から紡がれたのは辛辣な拒絶の言葉。「ま、待ってくれ。あんな婚約者よりも俺の方がよっぽど……」「あんな?」慌てた
「なんなのよ、あの男どもは!?」いつもは人を食ったような態度で余裕綽綽のウェルシェが、らしくなくウガァーッと喚き散らした。その叫び声にカミラはそっとため息を漏らす。「私は面白おかしく学園生活を送りたいだけなのに!」ウェルシェがマルトニア学園に通うようになって三ヶ月が過ぎた。学園生活の出だしは上々。優秀なウェルシェにとって、学業関係や学園行事を卒なくこなすのは造作もない。お得意の猫かぶりで問題なく気の合う友人も作れた。そう、全ては順風満帆……のはずだったのだが、一つだけウェルシェに誤算があった。「どうして、言い寄る男が絶えないのよ!」つまり、エーリックの危惧していた通りになってしま







